【第2種電気工事士】取得解説 Vol.11 筆記編9 交流回路の基礎2

今回も前回に引き続き交流回路の基礎について解説していきます。

前回の解説で、交流回路には抵抗とリアクタンスという抵抗勢力があるという事を説明しました。

これらをまとめたインピーダンスについて解説します。

前回の記事はこちらです。

導入編や以前の記事を読まれていない方は、まずはそちらの記事をご覧ください。

目次

インピーダンスとは

リアクタンスは『抵抗とは別次元の抵抗』と説明してきましたが、別次元、つまり簡単に足したり引いたり計算する事ができないのです。

例えると、肉体と精神、ス○ンドとスタ○ド使い、といったところでしょうか。

直流回路では、直列接続の抵抗は簡単に足し算で求めることができました。それは同じ方向だからできたことです。

方向が異なる場合はそうはいきません。

交流回路では、抵抗、誘導性リアクタンスXL、容量性リアクタンスXCがあります。

これら抵抗やリアクタンスをまとめたものをインピーダンス([Ω])と呼び、ベクトルや複素数あるいは絶対値で表します。

インピーダンスは異なる方向のものを含んでいるので、記号の頭に点(ドット)を付けて、\({\dot{Z}}\) と書いて\({Z}\)と区別することがあります。

複素数でインピーダンスを表現すると、\({\dot{Z}=R+jX}\)

絶対値でインピーダンスを表現すると、\({|\dot{Z}|=\sqrt{R^2+X^2}}\) といった感じです。

問題文などで単に\({Z}\)と記載されているものは、絶対値の事です。

絶対値は、大きさだけを表したものです。

ベクトル表示について

下図は抵抗RとリアクタンスXLの回路とベクトルを表したものです。

今までの直流回路ではR(緑色の矢印)だけでしたので、同じ方向なので簡単に足す事ができました。

別の方向であるリアクタンスXLは同じようには足せません。

この足し方は、ベクトルの合成で足すことができます。Rの後尾とXLの先頭を線で引く事でベクトルが合成されます。

これがこの回路のインピーダンスです。

この三角形は直角三角形です。ピタゴラスの定理(三平方の定理)で長さ(大きさ)を計算する事ができます。

ピタゴラスの定理について

ピタゴラスの定理は、直角の対面の長さの2乗は、残る2辺の2乗を足したものになるというものです。

上図のアルファベットはそれぞれの長さです。

cの長さを式で書くと、
$$c^2=a^2+b^2$$
となり、
$$c=\sqrt {a^2+b^2}$$
となります。

例えば、a=3、b=4であった場合、
$$c=\sqrt {3^2+4^2}=\sqrt {9+16}=\sqrt {25}=5$$
となります。

R=3[Ω](b辺)、XL=4[Ω](a辺)ならZ=5[Ω](c辺)になります。

ピタゴラスの定理で、a=3、b=4、c=5の3,4,5の組み合わせ、その倍の6,8,10の組み合わせを使った計算問題が出題されることが多いです。

例えば、a=3でc=5なら、bの長さは?といったものです。

計算する手間を省くために、この組み合わせを覚えておきましょう

複素数表示について

下図は抵抗RとリアクタンスXcの回路とベクトルを表したものです。

複素数で書くと次のようになります。

$$\dot{Z} = R-jX_{c}$$

リアクタンスXCにマイナスがついているのは、XLと方向が逆だからです。

複素数というと何やら難しい話に聞こえますが、無暗に足さないための仕組みと思っていただければOKです。

上図のベクトルを見ると、Rの長さにXCの長さを単純に足しても、Zの長さにはなりません。

正しく足すには、\({\sqrt{R^2+X_{c} ^2}}\)と計算する必要があります。

単純に足してはいかんのです。

複素数は数学では\({i}\)で表しましたが、電気の世界では電流と間違えないよう、\({j}\)を使います。

誘導性リアクタンスXLはプラス、容量性リアクタンスXCはマイナスになります。

マイナスと言っても、電気が流れやすくなるという意味ではなく逆方向の抵抗という意味です。

この2つは同じ軸上なので、普通に計算(足し算)できます。

例えば、
直列回路でXL=8[Ω]、XC=5[Ω]なら、リアクタンスの抵抗は 8 – 5 = 3[Ω]となります。

電流の位相については、XLに流れる電流は遅れ(マイナス)、XCに流れる電流は進み(プラス)になるので、位相とリアクタンスの符号を混同しないようにしましょう

電力について

交流の電力は、有効電力、無効電力、皮相電力の3種類があります。

有効電力Pは抵抗で消費される電力で、
$$P=VI\cos\theta$$
単位はW(ワット)です。

無効電力Qはリアクタンスで消費される電力で、
$$Q=VI\sin\theta$$
単位はvar(バール)です。

皮相電力Sは見かけ上の電力(計算上の電力)で、
$$S=VI$$
単位はVA(ボルトアンペアまたはブイエー)です。

下図のようなベクトルになっています。

有効電力は皮相電力を使うとP=Scosθとなります。

無効電力は皮相電力を使うとQ=Ssinθとなります。

力率について

交流回路において、皮相電力の中でどのくらい有効電力が含まれている度合いを表したもの力率と読んでいます。

力率はcosθで表されます。

$$\cos\theta=\frac{P}{S}$$

インピーダンスで表すと、

$$\cos\theta=\frac{R}{Z}$$

となります。

力率は最大1で、パーセントで表す場合もあります。(力率1=力率100[%])

力率が1なら、すべての電力が有効電力である、無効電力はゼロ、P=Sという事です。

抵抗Rに対し、リアクタンスXが大きくなると力率が悪くなります。

また、有効電力が同じでも無効電力が大きいと力率が落ちます。

無効電力が大きくなると皮相電力が大きくなり、全体的な消費電力が大きくなってしまいます。

殆どの負荷は遅れ負荷です。(容量性リアクタンスより誘導性リアクタンスが大きい)

力率が悪い場合、コンデンサー(容量性リアクタンス)を入れることで改善(1に近づいていく)されます。(XCでXLをキャンセル(マイナス)できる)

文章問題でコンデンサーを入れる事で力率が改善される問題がありますが、このような仕組みになるからです。

計算してみよう

過去の問題を解いて、理解を深めていきましょう。

一般財団法人 電気技術者試験センター様ウェブサイト』に掲載されているものを引用しました。
尚、記号や図などについては加工しています。

令和3年上期午前№4

図のような抵抗とリアクタンスとが並列に接続された回路の消費電力[W]は。

イ.500 ロ.625 ハ.833 ニ.1042

解答と解説

答え:ロ

右側のXLが気になってしまいますが、求めるのは消費電力、つまり抵抗で消費される電力を求めればよいです。

抵抗にかかる電圧は並列接続ですのでそのまま電力の式を適用すれば解くことができます。

$$P=VI\cos\theta$$

力率cosθは抵抗しかないので1であり、リアクタンスを考慮しなくてOKです。

$$=VI=\frac{V^2}{R}$$

$$=\frac{100^2}{16}=625$$

答えはロとなります。

インピーダンスを求める計算方法もやってみます。

$$Z=\frac{16\times j12}{16+j12}=\frac{j192}{16+j12}$$

$$=\frac{j192\times (16-j12)}{(16+j12)\times(16-j12)}$$

$$=\frac{2304+j3072}{16^2+12^2}$$

$$=\frac{2304+j3072}{400}=5.76+j7.68$$

ここでインピーダンスを複素数から絶対値にします。

$$Z=\sqrt{5.76^2+7.68^2}=9.6$$

インピーダンスが分かったので、力率を出しましょう。

$$\cos\theta=\frac{R}{Z}=\frac{5.76}{9.6}=0.6$$

計算する役者が揃いましたので、電力を計算します。

$$P=VI\cos \theta=\frac{V^2}{Z}\times \cos\theta$$

$$=\frac{100^2}{9.6}\times 0.6=625$$

試験では電卓は使えないのと面倒ですので、最初のやり方で解く方が良いです。

令和3年上期午後№4

図のような回路で、電源電圧が24V、抵抗R=4[Ω]に流れる電流が6A、リアクタンスXL=3Ωに流れる電流が8Aであるとき、回路の力率[%]は。

イ.43 ロ.60 ハ.75 ニ.80

解答と解説

答え:ハ

電源から出た電流10[A]は抵抗に流れる実数部分に該当する6[A]とリアクタンスに流れる虚数部分に該当する8[A]の合成になります。

電流を複素数で書くと6+j8=10となります。

インピーダンスや電力と同じで、全体の電流(10A)と抵抗に流れる電流(6A)の比ですので、6÷10で0.6となります。

または、力率の式と、皮相電力Sと有効電力Pを当てはめていけば解くことができます。

$$\cos\theta=\frac{P}{S}=\frac{I^2R}{VI}$$

ただし、この式の分子の電流は今回の場合はRに流れる電流であり、分母の電流とは異なります
抵抗に流れる電流をIRとします。

$$\cos\theta=\frac{{I_{R}}^2R}{VI}$$

$$=\frac{6^2\times 4}{24\times10}=0.6$$

単位が[%]なので0.6に100をかけて、答えは60になります。

力率計算のミソは複素数の絶対値と複素数の実数の比を出す事です。

令和3年下期午前№4

図のような抵抗とリアクタンスとが直列に接続された回路の消費電力[W]は。

イ.600 ロ.800 ハ.1000 ニ.1250

解答と解説

答え:ロ

直列に接続されていますので、まずはインピーダンスを求めましょう。

ここで、抵抗とリアクタンスの数字に注目してください。

ピタゴラスの定理の所で解説した、6,8ときたら10のパターンです。

計算するまでもなく、インピーダンスZは10Ωとなります。

続いてオームの法則によって電流を計算、100V/10Ωで10A流れています。

あとは、電力をI2Rで102×8となり、答えは800Wとなります。

令和3年下期午前№4

単相200Vの回路に、消費電力2.0kW、力率80%の負荷を接続した場合、回路に流れる電流[A]は。

イ.7.2 ロ.8.0 ハ.10.0 ニ.12.5

解答と解説

答え:ニ

まず、単相200Vの単相ですが、読んで字のごとく電源の相が一つしかないものの事です。今までこの解説で取り扱ってきたのは全て単相です。今後三相交流回路がちょっぴり出てきますが、位相が120°ずつずれたものです。
この問題では深く考えなくてOKです。

では、本題に入ります。

この問題は電力の公式に当てはめ、電流を逆算する事で値を求める事ができます。

$$P=VI\cos\theta$$

$$I=\frac{P}{V\cos\theta}=\frac{2,000}{200\times 0.8}=12.5$$

※2.0kW=2,000kW 力率80%=0.8

まとめ

少しややこしくなってきましたが、複素数の成り立ちと絶対値の計算を押さえておけば、あとはそれほど苦労せずに問題が解けると思います。

次回は、単相三線式と電路の電圧降下について解説していきます。

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